Xmas Dinner 2019

 Christmas.

その言葉の持つ響きにずっと憧れて大人になったような気がします。

 私は典型的な仏教徒の家庭で育ったので、クリスマスとは無縁でした。それでもクリスマスを連想させる品々は身の回りにはあって--祖父母が商売をやっていたせいでしょうか-—ショーウインドウに飾るベルやモール、ポインセチアを母が飾り付けてくれたものです。何故かツリーはなくて小学生の頃は紙やセロファンでツリーを工作して飾りました。我が家にツリーが登場したのはようやく中学生になってからです。そんな家庭でしたから当然、プレゼントは何も用意されず姉と二人で手芸の小物を作って交換したりしました。

 我が家にクリスマスのご馳走が登場するのは私が料理することを覚えてからで、中学生になって骨付きの鶏もも肉をホワイトシチューにしたのを今も思い出します。年々手作りに磨きがかかって凝った料理とクリスマスケーキ作りに挑戦してはいましたが、所詮ティーンエージャーなのでお金も掛けられませんし今考えると「ディナー」とはほど遠い夕食だったに違いありません。大学生・社会人になって一人暮らしをするとクリスマスは恋人達のデート行事になっていて、彼氏がいないと一人で寂しく過ごし、誰かいるときはレストランで外食&プレゼントが定番でした。

 私が七面鳥や鶏・鴨をローストするようになったのは夫と結婚してからです。夫はクリスチャンの家庭で育ったのでお正月よりクリスマスの方が楽しみという人です。結婚して1年間一緒に渡米したので、名実ともに本場のクリスマスを味わうことができました。大きなオーブンとマーケットに並ぶ巨大にも見える七面鳥は私の「焼かずにはいられない」気持ちを最大限に引き出しました。初めて焼く七面鳥はとても重くて、オーブンの出し入れの際は火傷に注意しながら夫の力を借りて二人がかりでしたが、楽しい思い出になりました。

 帰国して15年以上が過ぎましたが、日本では丸焼き用の肉を手にすることはとても難しく、スーパーでたまに見かけるのは1kgの小さな鶏です。私のオーブンも小さいのでローストビーフの方が材料を揃えるのも簡単で丸焼きローストを作ることはほとんどありません。15年の間で2回くらいでしょうか?夫の母・妹の家にはビルトインオーブンがあるので皆でワイワイ言いながら各自のレシピを持ち寄ってローストを作りました。クリスマスは日本のお正月と一緒で家族行事なんだなぁ・・と実感できました。

 そんな私ですが、今でも毎年クリスマスが近づくと丸鶏のローストを焼きたくなってしまいます。私なりの郷愁なのかもしれません。今年のご馳走は、何にしましょうか・・?