離れて暮らす親に手作りおかず 

 それは、突然でした。

 父からの電話で母が緊急入院したことを知りました。―心不全の急性増悪―。それから3ヶ月。ようやく母は自宅に戻ってきました。令和元年、クリスマスのちょっと前。

 でも、弱った母は料理ができません。「したい」という気持ちはあります。「これくらいできる」という気概もあります。でも、実際に台所に立てるかというと、別物です。父は配食サービスを利用しながら、スーパーマーケットのお惣菜を足して、簡単な料理をして「二人で何とかやっていくよ」と話します。しかし、遠方に住む娘としては、そんな話を電話越しに聞きながら…本当に大丈夫なのか???…と、不安でたまりません。

 何かできる手立てはないのか、と画策しました。職場の同僚は手作りのおかずを食べさせたくて、一人暮らしの大学生の息子にクール宅急便で母の味を送るそうです。毎週発送するので、宅急便の人とも顔見知りになって、慣れたら簡単よ、と言われましたが、根はズボラな私にそんなことができるのでしょうか。

 そして、救世主が現れました。いつも図書館で新しい料理本を物色していた私が見つけた冷凍おかずのレシピ集。しかも一食ずつの個食包装ができるので、これなら帰省の時に作りためておけば父にも調理できるかも…。

 急に元気が出た私は、暮れのスーパーへと買い出しに出掛けました。